さらさら録

日々のさらさらの記録

短歌の目 第6回:8月 振り返りなど

今回は振り返り以外の雑感もありますので、読んでいただけると幸いです。

baumkuchen.hatenablog.jp

振り返り

1.ジャワ
ジャワ島を越えてバリで死にたいね あまりに暑くて矛盾した日に

syrup16gの『バリで死す』*1という不思議な曲がモチーフになってます。
あまりに暑いと生きる気力を削がれるのですが、芥川龍之介が自殺した日もあまりに暑い日だったらしく、度を超した暑さは肉体だけでなく精神をも熱中症に引き込むのは面白いと思ったのです。そういえば、クリニックのドクターにも暑いとよく心配されます。

2.くきやか
紅色がくきやかに映ゆる横顔を眺めるためなら右目を捧ごう

なぜ右目なのかというと、わたしは手や足は右利きなのに目は左利きだからです。左に立つ横顔を見られるのなら、ということです。ちなみに、花火大会で紺の浴衣に見慣れぬ真っ赤な紅を口元にさした横顔を想定しています。

3.蝉
絶え間なく「死ね死ね死ね死ねうわあああ」と叫んでいるのは蝉か、それとも

今回の問題作。「あ、来た」と自分でも思いました。
前回無職だったのも夏で今回も夏で、やっぱり蝉の鳴き声が同じように聞こえたのです。たぶん、無職で転職活動も3ヶ月になるのに何も成果が出ないというこの状況でなかったらこの形にはならなかったでしょう。自分の中では好きか嫌いかという次元を超えた、この夏を象徴する1首です。

4.冥
水金地火木土天冥海のリズムをなくした理科の教科書

冥王星の格下げはセーラームーン世代のわたしには衝撃でした。というのも、セーラームーンでは蠍座の守護星が冥王星だからなんです。冥王星がもっともっと遠くなった気がしました。
今は水金地火木土天海で習うんですかね。この呪文のような語呂を入れたいと思ったのでした。

5.まつり
裾上げをまつり縫いですいすいと仕上げる背中はなぜだか大きく

「まつり」を祭で詠みたくないひねくれの表れ、あるいは最近タオルケットや服の裾などまつり縫いする機会が多かったためです。
こういうときの背中はたいてい小さいことになっているので、ひねくれて大きくしました。

6.日焼け
素足でも脱げないサンダル履くように残る日焼けが夏への未練

去年、自転車通勤の会社の友達の足がひどくサンダル焼けしていて思わず笑っちゃうくらいでした。それを思い出して詠んでます。もう戻れない去年の夏の話です。

7.くちづけ
くちづけは売約済のスタンプじゃないからわたしはわたしのものです

キスしたくらいで人のものになるなんてことはないんです。

8.風鈴
風もない熱帯夜には風鈴も倦んだ暑さの中で眠る


風がなきゃ風鈴は鳴りませんからね。風がなきゃ風鈴も一緒に眠るしかありません。名古屋の夏は朝晩もあまり気温湿度が下がらず嫌になってきます。たびたび東京に行っては「朝晩ちゃんと気温が下がる…!」と思ってたりします。

9.菊
因島 斜面を染める白い花可憐な花の名は除虫菊

菊=喪から脱却したかったのと、以前広島県因島に行った際に咲いてた除虫菊*2があまりにかわいく可憐だったところから来ています。虫除けに使われるなんてとても思えないんです。

10.【怪談短歌】
角部屋の隣は空き部屋真夜中にコール音4回響いて消える

ブレーキランプ5回ア・イ・シ・テ・ルのサイン*3を怖いと思うところから着想しました。だって5回小刻みにブレーキ踏むなんて危ない。
4回なのは単に死を連想する数字であるだけでなく、「会いたい」だとか「殺して」だとか「来ないで」だとか「死んでよ」などといった言葉を当てはめやすいからです。部屋はアパート・マンションだけでなく病院も想定しています。


今回は自分の置かれた身の上が出てるなぁ、と振り返ってみて思います。
友人から「バリ島で死なないで」と言われたり、主宰の卯野さんに「syrup16gばかり聴いてるから」と言われたりで心配をかけましたが大丈夫です。あとsyrup16gばかり聴いてるわけじゃないから大丈夫ですよ…!

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雑感

みなさまへの感想も先に書いてアップしているのですが。baumkuchen.hatenablog.jp
baumkuchen.hatenablog.jp
自分への勉強だと言い聞かせて書いているのですが、どうしても感想を書きようがないと思ってしまうこともあって、感想に見せかけた雑談に逃げてしまったりしていたんですね。正直に告白しますと。なので、これからは全員でなく「書きたい!」と思った人に書くようにしていきます。
感想にならない感想になっていることを見抜いたぜろすけさんは流石だと思いました。nogreenplace.hateblo.jp

わたしが振り返りを書く理由はぜろすけさんと重なるのですが、「わたしはこういう視点で詠んだんだけど、果たしてどう読まれたのかのズレを見てみてほしい」というところなんですね。あと、他人の振り返りを読むことで短歌を詠むときの視点を広げるきっかけになれば、という思いもあるんです。
振り返り記事は、三十一文字で言い切れなかったことを説明する場所じゃないと考えています。その背景や視点や修辞の意図を書いたりしていますが、短歌単体で成り立っていることが前提にあるから書ける。言い切れないことを後から説明するのなら、それは短歌と言えるのか?それは単なる自己完結に陥っているだけではないのか?と。
これはあくまでわたしの考えなので、それを他の方に強要する気はさらさらありません。ただ、わたしはこういう考えで詠んでますよ、という話です。

感想を書くことだとか、短歌とは何だろうとか、三十一文字にそれっぽい言葉を当てただけの何の感情もないものは短歌と言えるのだろうかとか、無意識に余白を作れる人と作れない人の違いは何なんだろうとか、そういったことを昨日ツイキャスで話してたんですが、話しながら振り返るのは楽しいと思いました。人のスタンスを知ることができたり、その場でお題3つを詠みこんだ即興短歌を作ってみたり、悶々と「短歌とは、感想とは」と考えていたのが少し晴れたような気がします。
昨日ツイキャスを聴いてくださったみなさま、ありがとうございました。ここに即興短歌を載せようか迷いましたがやめておきます。Evernoteに保存してありますけどね。えへ。そして2時間ひとりで話し続けて「オールナイトニッポンのパーソナリティってすごい」と思ったのでした。オールナイトニッポンはCMだったり曲が入ったりしますが、それを挟まなかったので終盤脳が酸欠になってました。

何だかんだで読んで感想を書いてみるということは表現に向き合うという意味でも大事だと思ったのでした。気に入った歌への引用スターから始めて、いずれは気に入った歌だけでもいいから書いてみるとかなり勉強になります。
ただ、無理に書くことはないです。楽しめなくなっちゃいますから。

楽しく互いにブラッシュアップしていけるような流れが作れたらいいな、と願いながら今後も参加していきますので、お願いいたしまする。

*1:バリで死す - syrup16g - 歌詞 : 歌ネット 。「あなたどなた」からと「何か全部ナシにしねえか」からで分かれていて、イヤホンの右と左から別々に歌われている

*2:除虫菊 | 因島観光協会

*3:ドリカムの未来予想図IIですね

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