さらさら録

日々のさらさらの記録

短歌の目 第0回:2月 振り返り話

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短歌の目初回の締め切りを過ぎたので、少し裏話的なものを書いておきます。


2月投稿短歌の感想です1−10 - はてな題詠「短歌の目」
卯野さん(id:macchauno)、とってもお疲れさまです。
その後方支援になればいいな、ということも含めて書いてます。

つらつらと個人的な振り返りをしますが、詠んだわたしの解釈と読まれた方の解釈が食い違っていても気にしないでください。解釈は読んだ人の数だけありますし、その解釈はその人のものでわたしの手を離れたものですから。


☆ * ☆ * ☆


はてな題詠「短歌の目」 第0回:2月 - さらさら録


1.白 

 告白をするのは愛だけではないと知った 罪を見透かされた日

素直に色としての白を詠みたくなかったので、白の入った熟語でぴんときた告白を使いました。題詠って語彙力が試されるので頭に新明解国語辞典をインストールしたくなります。
この歌、普通に区切ったら
 告白を|するのは愛だけ|ではないと|知った罪を|見透かされた日
なんですよね。
だけど上記のように句の途中で切りました。すごーく大雑把に言うと、本来の句の区切れをまたいで意味を切ることを「句またがり」と言います。これをどこかで織り込みたかったというのもあるのです。
上記の卯野さんのtipsでも引かれてますので、そちらもどうぞー。


2.チョコ 

 いつまでもチョコ一粒でご機嫌を取れるこどもでいられないのに

安易にバレンタインネタで詠みたくなかったのでこういう歌になりました。
イメージとしてはポルノグラフィティの中で一番好きなアルバム『雲をも摑む民』の中の『ビタースイート』~『ニセ彼女』の流れ…と思ったらぜろすけさん(id:zeromoon0)も『ビタースイート』のイメージで詠まれていてびっくりしました。
「短歌の目」個人的反省 - 無要の葉
『雲民』の中でも大好きです、『ビタスイ』。
『ビタスイ』も『ニセ彼女』もチョコが出てくるのですが、これを女から見たらこんな感じかなー、って思ったのです。解釈がたくさん生まれそうな歌になりました。


3.雪 

 灰色の空から次々落ちる雪 まるで君を連れていく羽根

短歌の目参加エントリで「雑歌!挽歌!相聞歌!」と叫んでますが、これは万葉集のエッセンスです。平たく言うと相聞歌が恋歌、挽歌が死者に捧げる歌、雑歌がその他の歌なのですが、この3種類を詠もうとしたのです。
これは相聞歌と挽歌のリバーシブル仕様です…というか、今回相聞歌と挽歌のリバーシブル仕様の歌が多くなりました。相聞歌も挽歌も人を想う歌ですからねぇ。


4.あなた 

 たわむれに呼んでみたの「ねえ、あなた」もうわたしたち戻れないよね

「あなた」って、妻が夫を呼ぶときのイメージがあります。つまりまあ、そういうことなんでしょうね。


5.板 

 まな板の上に乗せるならもう少しお手柔らかにね 割れ物注意

最初に詠んでいた歌と並べてみて「三句切れが続くなぁ」と思い急遽四句切れで詠んだ歌です。ボツになった歌も載せておきますね。ボツ歌のほうが気に入ってます、実は。
 乱暴に名前を書き留められたくない 黒板の隅の日直みたいに


6.瓜 

 瓜売りが瓜売りに来てノリノリで瓜投げ瓜食べ瓜叩き割る

はい、今回最大の問題作にしてもっとも引用スターを集めた一句が来ました。しかしこの瓜売り、ノリノリである
これはそのまんま瓜で詠みたくないし(この台詞は既に3回めである、ひねくれ者だということがよくわかる)西瓜も胡瓜も冬瓜も南瓜もかぶるだろうなと思って悩んでたら早口言葉の「瓜売りが瓜売りに来て売り残し売り売り帰る瓜売りの声」が降ってきたのです。瓜売りが頭から離れてくれないので、もうそのまんま勢いと語感重視で詠んでます。叩き割ったのは最後に売り物を破壊したら面白いかなーと思ったので。そもそも投げて食べてる時点でもうアレなんですが。もちろん句切れなんてもんも叩き割ってます。
我ながら、この瓜売りが売ってる瓜はまともな瓜なのか心配になりますね。ドラッグ的な成分か何か含まれてるんじゃないでしょうかね。


7.外 

 新幹線 中に漂う551 外には流れる727

これも人気でした。東海道新幹線上りあるあるですね。数字が並ぶ面白さは横書き短歌ならではだな、と思って並べました。
昔勤めてた会社の本社が大阪なのでまれに出張に行ったのですが、そのときの帰りがこんな感じでした。
551は豚まんで有名な551蓬莱ですが、727は説明がいりますねたぶん。これはセブンツーセブンと読みまして、東海道新幹線沿線から見える立て看板なんです。白地に赤ででかでかと「727」と書いてある看板が野っ原の真ん中に佇む風景はシュールとしか言いようがない。

新幹線から見える「727」の立て看板は何物なのか 〈AERA〉|dot.ドット 朝日新聞出版
これは初句切れで七五調チックな歌です。

8.夜 

 「朝は嫌い。どこにも隠れられない」と残して君は夜に隠れた

これは自分自身の夜へのイメージもあるのですが、ポルノグラフィティの『月飼い』からの影響が否めないですね。ある時期までのポルノの歌詞はとても素晴らしかったんですよ。これについて語ると長いのでまた別の機会に。
一般人に使う言葉じゃないですが、古語での「隠れる」の意味も意識しています。


9.おでん 

 ちくわぶを知らぬ名古屋の実家では味噌だれ乗せておでん頬張る

名古屋のおでんにはちくわぶがないんですよ。そして味噌で煮込むんじゃなくて味噌だれを乗せるんですよ。味噌だれを乗せず、そのままもしくは辛子で食べるおでんは「関東煮*1と言います。
未だ見果てぬちくわぶを食べたいと思いながらわたしは大根や玉子に味噌だれを乗せたおでんを頬張るのです。


10.卒業 

 写真だけ笑顔のままでひとり泣く あたしまだまだ卒業できない

「わたし」ではなく「あたし」。一人称でイメージががらっと変わるのが面白いところです。
写真とは何なのか、何から卒業するのか、それは各々にお任せいたします。「卒業」の歌はエモい歌が多くて読んでて楽しかったです。


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今回参加された方の歌の中で気に入ったものに引用スターをつけて回ってますが(まだ来てないよスター欲しいよという方はご一報ください)、さっくりとした感想も書いていきたいです。

*1:かんとに、と発音する

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