野球のお正月に、『プロ野球画報』(ながさわたかひろ)
\明けましておめでとうございます/
プロ野球12球団が一斉にキャンプインする今日2月1日は野球クラスタにとってのお正月*1。にーがつーはキャンプーで野球が見れるぞー♪ということで、JスポーツとUstreamのキャンプ中継にかじりついて過ごした休日なのでした。
ドラゴンズ ライブTV, Ustream.TV: 2015 中日ドラゴンズ 春季キャンプの配信予定は下記になります。 ■2月1日~26日まで(予定)※5日,9日,16日,23日,は配信休み ※天候等の都合により配信は中止、変更となる場合がありますのでご了承ください. 野球...
試合はほとんどネット中継しないのに、キャンプは連日Ust(2013年から)とニコ生(今年から)放送する謎の球団、中日ドラゴンズ。
キャンプ初日特有の「あれ今年うち優勝するんじゃね?」感
— ローマ帝国の配下でねぎはまゆげをなくした (@ccmnt_) 2015, 2月 1
オープン戦で打ち砕かれるまでは夢を見ていたいんですよ…。
さて。
選手がキャンプに入ってる間に、こちらも去年の復習をしてシーズンを楽しむ体制を整えねばならないわけです。
そこでお勧めするのがこの本。
- 作者: ながさわたかひろ
- 出版社/メーカー: ぴあ
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本
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この本は、わたしにとって念願の本だったんです。
ながさわ選手を最初に知ったのは、Number Webの中で愛読している「野次馬ライトスタンド」に取り上げられたこの記事。
ヤクルト芸術家・ながさわたかひろ。一場退団で遂に40歳で現役引退か!?(1/5) [野次馬ライトスタンド] - Number Web - ナンバー
これを読み、過去記事を遡り、氏の作品を見たいと猛烈に願った2012年。しかし個展会場は東京。なかなか見に行くことができなかったのですが、ようやく間近でこの作品群を見ることができました。
この記事では、彼の思いに敬意を表して「ながさわ選手」と表記します。そして、書きたいことが爆発して非常に読みにくい乱文になってしまい申し訳ありません。
ながさわ選手は元々他のテーマで作品を制作していた版画家だったのですが、ある年からプロ野球1シーズンを作品にし始めます。その経緯は過去の「野次馬ライトスタンド」に詳しく書かれています。このコラムを書いている村瀬秀信さんの文章はとても面白いんですが、ながさわ選手に対してもそれは遺憾なく発揮されています。「現代芸術とプロ野球のコラボレーション。シュールレアリスムとシュールストロム*2ぐらい似て非なるこの2つの世界を融合させたながさわ」って。
一場靖弘を偏愛する“ヤクルト芸術家”「ながさわたかひろ」を知ってるか?(1/4) [野次馬ライトスタンド] - Number Web - ナンバー
“野球の底力”を信じて戦い抜いた、芸術家・ながさわたかひろの憂鬱。(1/5) [野次馬ライトスタンド] - Number Web - ナンバー
生活のすべてをヤクルトの絵を描くことに捧げ、自らを「ヤクルトの選手」というながさわ選手を、もしかしたら「頭がおかしい」と言う人がいるかもしれません。いや、確かに変な人ではあるのですが、わたしは彼を笑うことができないんです。野球に取り憑かれすべてを注ぎ込んだ末にヤクルト球団から事実上の戦力外通告を受け生活に困窮してもなおヤクルト芸術家として全試合を描き続けるそのロックな生き様、それ自体も含めた現代美術のようにわたしには見えるのです。それは、野球にどうしようもなく取り憑かれてしまう気持ちがわかるからかもしれませんが。
そんなながさわ選手への潮目が変わってきたのが、去年2014年シーズンのこと。
彼の作品がグッズ化されたり、アウト×デラックスに「野球ができないのに東京ヤクルトスワローズと無理矢理契約しようとしている男」として出演したりして、野球芸術家たちとグループ展を開いたり、徐々にこのプロ野球選手と名乗る美術家が認められるようになってきたのです。
そして出版されたのがこの「プロ野球画報 東京ヤクルトスワローズ全試合」。
この本、ヤクルトファンじゃなくても、プロ野球ファンならぜひ手にとってみてほしい。スコアブックを絵にしたいとの思い通り、1試合分の投手とスコアプレイが余すことなく1枚の絵にぎっしり描かれています。そう、エラーさえも…上田…森岡…川端…比屋根…飯原…上田…。そして、相手チームのスコアプレイも描かれてるんですが、ヤクルトの選手と同じように躍動感溢れる活き活きとした絵で描かれてるんですよね。絵がうまいのはもちろんなんですが、選手とながさわ選手の熱意が重なり合って余白からほとばしってくる。フォームや容姿が似ているというレベルではないものが描かれています。合間合間に描かれたながさわ選手の日常や時事ネタからも、野球は日常であり彼の生活であり彼は選手なのだと伝わってきます。
わたしが「凄いな」と思ったのは、各球団がサードユニフォームを着て戦う試合の紹介。ヤクルトは他チームのホームでのサードユニフォーム着用試合に当たることが多いのですが*3、その際の他球団の企画ロゴや企画ユニフォームを丁寧に描き込んでるんです。中日の「燃竜」、阪神の「ウル虎の夏」、横浜の「STAR NIGHT」、広島の「赤道直火」、それぞれのロゴやユニの精密さや色合いの再現度に感動したのです。これは見て確かめていただきたいところ。
そして選手だけでなく、描かれているマスコットがとってもかわいいながらもよく特徴が出てるのです。楽天のクラッチーナちゃんがこんなにかわいかったなんて。バファローブル・ベル兄妹や、つばみに惚れられているロッテのマーくん、つば九郎の盟友ドアラも出てきます。
野球ファンの中には、夜のスポーツニュースで全試合の結果とハイライトを確認することをルーティーンにしている人も少なくないでしょうし、わたしもその1人なんですが、読んでいるとドラゴンズが絡んでいない試合でも「あー、あったあったこの試合!」と思うことがたくさんあるのです。それだけ、印象に残ったシーンが今にも動き出しそうな勢いで焼き付けられているのです。去年はヤクルト打線が爆発して「セ界の火ヤク庫」と言われていたのもありますが。もちろん、本でも爆発しています。
この本には、セ・リーグのクライマックスシリーズと日本シリーズも収録されているのがうれしいところです。全試合どこか気楽に見てましたよ、自分が応援するチームが絡まない野球を見られる機会ですからね…少し前ヤクルトと中日がクライマックスシリーズで何度も死闘を繰り広げた頃が懐かしいなぁ…。
そんなこんなで野球好きの偏愛レビューとなってしまいましたが、野球好きはもちろん、イラストエッセイや他のスポーツがお好きな方にも贈りたい1冊です。
ながさわ選手の1年間の戦いが詰まっています。
以下おまけ。
表紙には昨年最多安打を獲得し日本人右打者安打記録を更新したヤクルト山田を中心に12球団の選手が描かれていますが、他11球団の選手の対ヤクルト成績を調べてみました。「なんでうちは森野なんだろう?」と思ったことがきっかけですが。
菅野(巨人・投) 4試合2勝0敗 防御率2.77
藤浪(阪神・投) 1試合1勝0敗 防御率9.00
大瀬良(広島・投) 4試合3勝0敗 防御率3.29
森野(中日・内) 打率.392 本塁打6 打点18
筒香(横浜・外) 打率.373 本塁打5 打点18
松田(ソフトバンク・内) 打率.316 本塁打0 打点2
西(オリックス・投) 1試合0勝1敗 防御率1.13
大谷(日本ハム・投*4) 1試合0勝0敗 防御率2.57
成瀬(ロッテ*5・投) 1試合1勝0敗 防御率2.57
岸(西武・投) 1試合1勝0敗 防御率7.11
ジョーンズ(楽天・外) 打率.154 本塁打0 打点1
パは交流戦でしか対戦しないので成績はそこまで反映されてないですが、セは見事にヤクルトキラー+話題性のある選手が選ばれてますね。森野は東京ドームやハマスタでよく打ってたけど、対ヤクルトでもこんなに打ってたのか…というか関東球場大好きなのか。西武の岸がいい感じだったのに終盤セ界の火ヤク庫に燃やされパ・リーグを震撼させたのは覚えてますが、藤浪も6回10安打6失点でよう勝ったなぁとびっくりしてます。
読んでいて、「この人いつも負けてるな」「この人いつも打ってるな」「この人いつもエラーしてんな」と思う選手が何人も出てくるのですが、その選手たちの通算成績を見るとそうでもなかったりして、データと組み合わせるとまた面白い読み方ができます。
そういう多角的な読み方ができるのも、この本の魅力ではないでしょうか。