さらさら録

日々のさらさらの記録

短歌の目 4月 それと昨日の抱擁の果て

短歌の目4月のお題です - はてな題詠「短歌の目」

今回即詠です。よろしくお願いします!

題詠

1. 皿

君の背に広がる海に日が射せば河童のお皿みたいと思う

2. 幽霊

透き通る指では涙を拭えない幽霊の悲しさを知る夜

3. 入

不用意に春が街へと入り込みうっかりわたしも花見などする

4. うそ(嘘、鷽、獺も可)

知りすぎないことが幸せなんですとうそぶくわたしに吹き抜ける風

5. 時計

腕時計外せば始まる夜があり到着時刻を無視した航海




テーマ詠「新」

まっさらなノートにあなたが書き入れた文字が読めない緑のインク

カラス鳴き駅裏に撒かれた吐瀉物を新しい光で押し流す

コンビニに踊る新商品の文字一緒に踊れず立ち尽くしていた

ルーキーが落とした凡フライの行方それと昨日の抱擁の果て

新しく取り出す錠剤いくつかを飲み干すことで生き延びている

しだれ桜の下

桜が少しずつ散り始めている。間に合うように、ソメイヨシノを抜けてしだれ桜を見てきた。

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ソメイヨシノとしだれ桜のピンクのグラデーションがきれい。

 

桜は偉い、と思う。春の訪れを告げるようにきっちりと咲いて、街をピンクに染め上げ人々から愛でられ、飽きられる前に醜くなる前にさっと散っていく。その生き様も含めて、桜は愛されているのだろう。しだれ桜の下で、散った花びらを靴の先でつつきながらそんなことを思う。イヤホンからは『さくら』というタイトルの曲が流れていた。

すべてを失くしてからは

ありがとうと思えた

これはこれで青春映画だったよ

俺たちの

 

悲しくて 悲しくて

涙さえも 笑う

優しさも 愛おしさも

笑い転げてしまうのに

syrup16g『さくら』より)

翻ってわたしはどうだ。しだれ桜を見上げることなんてとてもできない生き様である。愛でられるわけでもなく、褒め言葉はうまく受け取れず、潔く散る勇気すらも持てずに日々をぐずぐずと生きている。いや、散る勇気は持たなくていいのかもしれないけれど。

頭上の桜は、わたしの思いなど迷惑そうに風に揺れた。ぱらりと花びらが舞う。桜は散るときでさえこんなに綺麗なのに、わたしは。

たぶんこんなことを考えていたら、わたしの友人は叱るなり心配してくれるだろう。そうした存在に生かされていることも十分わかっているし、だからこそ生きていたいという気持ちがある。反面、自分の中の言うことを聞かない部分は、桜と自分とを比べてしまう。散らかった思考は悪い癖に呑まれていく。悪い癖であることもわかっていながら、わたしを求めてくれる人への裏切りであることもわかっていながら、止められない部分がずしりと胸のあたりにのし掛かる。花に酔ったのかもしれない、とよろよろ歩き出して自販機でコーラを買い飲み干した。

 

こんなぐずついた気持ちは、気圧差と気温差のせいだ。何しろ名古屋は、昨日の最低気温が今日の最高気温なのだ。そのせいか喉だって嫌な雰囲気を醸し出しながら痛い。そもそも毎年3月から4月はたまらなく精神を損傷しているから、これだって全部春のせいだ。

喉の痛みが引いたら、街が葉桜の緑に覆われたら、また何か変わるだろうか。

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