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さらさら録

日々のさらさらの記録

『短編小説の集い』第13回感想:魚

短編小説の集い「のべらっくす」

あれ、今月応募少ない…?と思いつつ読んでました。

旬はずれ【第13回短編小説の集い参加作】 - nerumae
卯野さんどれだけ引き出しが広いんだー!と真っ先に思いました。話の筋としてはベタなんですが、ディティルの描写が丁寧。そして、定一がうまく捌いた旬外れのお魚が食べたくなりました。今の時代なら定一をヘタレと罵るのも容易いですが、この時代ではそうもいかないですもんね。それでも「とっととお小夜をさらっちまえよ」と言いたくなるのですが。安心して時代観に浸れるお話でした。

『水槽に沈む』 - さらさら録
三人称を用いているのに自分から離れきれなかった題材。わたしだけでなく、わたしの周りに何人か家庭に縛られ自分のことを諦めなければならない友人がいるので、彼らのことも思いつつ書いてます。わたしにしては冷淡とも言える文章で書いています、自分としては。それくらい突き放さないと書けなかったし、その方が澄子の置かれた状況が伝わると思ったのです。全身麻酔の音や顔がびしゃびしゃになるのは実体験です。ラストはフルブラックリボンも手放すつもりだったのですが、30cm水槽の存在を知って変えました。自分にとって、どこかに救いがないとつらかったんです。

徴税吏員 ―【第13回】短編小説の集い― - 本の覚書
鮭介と鯉子という名前にまずびっくりしました。そうか、そう来たか。差し込まれるいくつものエピソードからのラストに困惑してしまいました。最後の晩餐の魚は何を示唆しているのか、寮母さんの話は、安田講堂の話は、登場人物の名前の意味は、と謎は尽きないのですが、そのあたりを読み切れませんでした。鮭介は鮭なので、どこかに戻ってそこで死んだのでしょうか。

【短編小説】深淵の深みより覗く影 - なおなおのクトゥルフ神話TRPG
クトゥルフ的世界にまったく馴染みがないのでわかるかな…と思いながら読み進めましたが、その部分は杞憂でした。1行毎に改行+空白行を入れないほうが読みやすいと思います。空白行が挿入されることでイメージが分断されてしまうような感覚がありました。「在りし日の教授」ってまるで死んだみたいじゃないかと思ってしまいました。主人公の成長譚という位置付けを考えると、巨大アンコウ発見後に前半部の深海にのめり込んだエピソードを入れて再構成した方がわかりやすくなるかもしれません。

片思いのその先へ──のべらっくす第13回 - 創作の箱庭
フラッシュモブプロポーズってやつですね!実咲が特に部活もやらなかったりどんどん堕落していったのは、功には到底追いつけないとわかっていたらかなんでしょうか。そのあたりの実咲の描写があるとぐっと切なくなったと思います。切ない三角関係というよりも、なるべくしてなった結末に読めてしまったのが残念でした。それにしても大学生で白タキシードとはやるな。

「リ・インカーネイション」(第13回短編小説の集い参加作) - 空想少年通信
金魚と猫の会話のテンポがよくて楽しかったです。ともすれば切ない話なんですが、猫との掛け合いのおかげでユーモラスに読めました。猫に「お前は優しすぎたんだ(意訳)」と言われるところなんか、胸がちくっとしました。タイトルが輪廻転生なのでまた輪廻の輪に放り込まれるのか冷や冷やしましたが、あったかいラストでよかったです。猫にとって彼はいい話し相手なんじゃないでしょうか。

瞳に泳ぐ、魚はキミの……(第13回 短編小説の集い) - ときまき!
導入でぐっと引き込まれました。ユキ視点の導入からタカシ視点の結末へと繋がる構成が見事です。謎のある女性に惹かれるとはよく聞きますが、瞳に魚を泳がせた謎だらけの美少女なんて、魅入られたら最後人生を狂わされても本望といったところでしょうか。これは純愛に見せかけた狂気のお話だと思ってます。切ないというより、哀しいお話でした。現代版人魚姫といったところですね。

鯛の活造り(【第13回】短編小説の集い) - いつかのことです。
この鯛と友達になりたいです。ベースにあるのは『およげ!たいやきくん』なんでしょうが、それがこういう形になるとは。無理やり飲みに行こうと誘って愚痴ってくる鯛って想像しただけでも笑ってしまいます。きっと鯛は、通じるものがあったから津村に声をかけたんでしょう。ラストの呆気なさに一気に現実に引き戻されます。ああそうか、生きてくしかないんだなぁと。

海のそこ(第13回短編小説の集い) - しわしわのウェルテル
大人のラブストーリーです。ひらがな効果なのか江國香織的な雰囲気が漂っていて、ふわふわと浸って読めました。最初はふわふわと甘く静かな深海を漂っていられるのかと思っていましたが、そんなわけにはいきませんでした。せかせか、すいすいと生きてきたみちるが知った自分の欲しいもの。それを満たしていたようで自分を満たしているだけだった智。最後の2行が胸を突き刺します。初参加とは思えなかったです。

「第十三回 短編小説の集い」に参加します。「サメ」です。 - 池波正太郎をめざして
アラバマの月』というカクテルを知らなくて、探したけど見つかりませんでした。『アラバマのナンパ師』ならあったのですが…。シホはこういう仕事をしていたんですね。今回、まさりんさんにしては校閲が甘い気がしました。海に出掛ける話でも来るのだろうかと思っていたらシホの職場の店の話で、いい意味で期待を裏切られました。まるでラジオドラマのアヴァンティみたい。

のべらっくす【第13回】短編小説の集い 『うつくしい魚』 - ファンタジー頭へようこそ!
どこがグロいんだろう、どことなく寓話めいていて面白いなぁ…と読んでいたら急転直下でした。ばあさんの心が冷えてしまったのもわかるし、じいさんがほうけたように見とれていたのも仕方がない、人魚という存在は、人を狂わせるものなのかもしれません。ばあさんの行く末として伝えられている結末がぞっとするし、この話がどうしてこう伝承されているのかを考えるとまたひんやりとしたものを感じるのです。

コンソメスープの海 ~短編小説の集い宣伝~ - 泡沫サティスファクション
コンソメスープに沈んだ海、装甲クジラ、煮込まれる地球。SF的世界観を漂いながらもお腹が空いていました。でも海がすべてコンソメスープなら逆にお腹は空かないような気もする。最後の遺跡に驚かされました。それを持ってきたとは。「海=青い」という概念を揺さぶられながら読みました。コンソメスープの海に沈んだ世界で、人や魚以外の動物はどうやって生きているんだろうと想像すると楽しい反面概念がぐらぐらします。

* ☆ * ☆ *

お題が『魚』ということでしたが、前回の『祭り』と違っていろんな切り口にばらけていて面白かったです。お題を伏せて小説だけを並べて、共通項を答えよと問うても『魚』が出てくるかどうかといった具合に様々な話が読めました。抽象的なお題だった分、幅広くばらけたような気がします。
感想を書き終えた今、水族館に行って帰りにおいしいお魚を食べたい気持ちでいっぱいです。

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