短歌の目 第14回:12月 唯一として飲み干すカフェオレ
題詠 5首
1. おでん
だし汁に染まったおでんの大根の白さが今ではもう懐かしい
2. 自由
海を行く魚のような自由さで泳げやしない朝の乗換
3. 忘
忘れないことそれだけが生きている唯一として飲み干すカフェオレ
4. 指切り
指切りをする幼さが愛おしい守られないと知っているけど
5. 神
阪神のラッキーセブンの風船がただ眩しかったカクテル光線
テーマ詠「冬休み」
みかん剥く手と手は染まって真っ黄色たくさん食べて大きくなあれ
雪を待つ人に予報が変わったと伝えられずに手袋渡す
まるで人生が止まっているかのようだ
呼吸が鼓動が続く限り、そんなことはないのだけど。
今のわたしには、人生が止まっているかのように思える。この場所にただうずくまっているだけだ。ここからどこに向かうのかもわからない、上り坂の途中なのか下り坂の途中なのかもわからない。そんな場所でただうずくまっている。
爪が割れやすいので補強にマニキュアを塗っているんだけど、右手中指だけはクリアレッドのマニキュアを塗っている。それは1本だけ外しておしゃれにしているわけではなく、右手中指の爪だけぶつけたのかへこんでいるからだ。この爪がきれいに生え替わる頃、わたしはどうなっているのだろう。最近じゃ爪の伸びる速度まで遅くなってしまった。うずくまっている人間にふさわしい。
生きることが、わたしにはとても難しいことに思えて仕方がない。