さらさら録

日々のさらさらの記録

第9回近藤芳美賞に応募したこと

初めて短歌の連作の賞に応募した。

結果は入選だった。

近藤芳美賞はまず入選内定通知が届き、そのあと奨励賞以上に決まったら期日までに追加で通知が届くシステムらしい。内定通知のあと、毎日どきどきしながらポストを覗いてはポスティングのチラシだけを取り出す日々を続け、期日になっても通知は来なかった。

悔しかった。わたしなんてこんなもん、と納得したくなかった。いろんなことを「わたしなんてこんなもん」と言って諦めてきたけど、本当は自分のことを諦めたくなかったんだ。諦めたくないからつくってるんだ。圧倒的に悔しかった。このときの悔しさで、もうしばらくはがんばれるな、と思った。

 

近藤芳美賞に出した連作『異界へと』は、東直子さんの連作講座の課題としてつくったものを手直ししたものだ。それまで連作のつくり方がわからなくて手応えのない日々を過ごしていたんだけど、講座で教わったことをもとに『異界へと』をつくったとき、「あ、連作をつくるってこういうことなのか」とわかった気がしたのだ。わたしの短歌連作のスタイルはここにあるな、わたしでも連作はつくれるんだな、そう思えた連作だった。

夫には「そうやって編んだ連作が入選するのはすごいことだよ」と言われた。とにかく悔しい気持ちでいっぱいだったけど、つくりたいようにつくった(そして目指したいところがようやく見えた)連作が入選したことは喜んでいいのかもしれないな。

 

15首で応募できる賞が近藤芳美賞しかないため、ここに出したんだけど、次はもっと長い連作をつくりたい。わたしはきっとまだがんばれる。

 

応募作の抄録はリンク先中ほどにPDFで掲載されています。

第23回 全国短歌俳句大会|NHK学園生涯学習通信講座

完全版はネットプリントで配信しているので、よろしければご覧いただければと思います。

 

フィルムズ

フィルム写真を始めてしまった。

 

元々興味はあり、実家から祖父のお古のカメラを譲り受けては撮っていた。しかし、なぜかいつも最後のフィルム巻き戻しの際にフィルム巻き戻しボタンを押し忘れ、そのままクランクを回してはフィルムをぶっちぎってしまうというもったいないにもほどがある行為を続けていた。

雑なわたしにフィルムは難しいのかもしれない、でもやっぱり興味はあるという状態を数年続けていた。わたしにはしばしば(しょっちゅう)やりたいことへの興味関心が振り切れることがあり、去年12月にまたフィルムカメラへの興味が高まってしまった。実家に母が使っていた簡単なフィルムカメラがあったはず、と思い出して行ってみたところ、母が使っていたキヤノン オートボーイSⅡを見つけた。カメラ好きだった祖父が母に買ってきたものである。これならAFにオート巻き戻しだ、何とかなるかもしれない。そう思いフィルムを装填してみた。

結果、何とかなった。懸念していた巻き戻しも自動で行われ、写真を撮ることが楽しくなり、持ち歩いてはスナップを撮り続けた。フィルムを4本撮ったところで郵送で現像に出した。テストにしてはずいぶん撮っている。わたしが小さい頃、祖父は近所の個人経営のコンビニへ現像に出していたのに、今や郵送である。昔は街の至る所に同時プリントの幟があった気がするんだけどな。

そんなことを思いながら数日後、ネガとスキャンデータの入ったCD-R、そしてインデックスプリントが帰ってきた。ちみちみと並んだインデックスプリントを見て、思わず声を上げてしまった。

写真が撮れている。それもフィルムで。

それだけではない。フィルム独特の質感や色味、デジタルとはまた違う光と影の捉え方に心を掴まれてしまった。これは楽しい趣味かもしれないぞ、なにしろ満足感がすごい。デジタルの時と同じように自己満足のスナップ写真なんだけど、データを見返してはにやにやしてしまう。亡き祖父もこんな気持ちで写真を撮っていたんだろうか。


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フィルム:Kodak ultramax400


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フィルム:FUJICOLOR100

 

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フィルム:FUJICOLOR SUPERIA PREMIUM 400


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フィルム:Kodak ColorPlus 200

 

デジタル一眼もハイエンドコンデジも持ってるけど、フィルムはフィルムでまた違った良さがある。使い分けながら楽しく撮っていけたら、自分が残したいものを残していけたら。

 

 

もしもし、じかんですか

油断すると週報が書けなくなる。よくないね。というのも、原因不明の疲労感に悩まされているのである。動けないわけではないけど、寝ても寝てもだるい。一日7時間寝るようにしているけど、それでもたまに休日におうち入院を決め込まないと動けない。

そうこうしているうちに左耳がなんとなく痛くなってきた。あまり耳が強くない自覚はあるので緊張感を持って注視していたところ、耳が詰まる感じまでしてきたため耳鼻科への受診を決めた。しかし今住んでいるところは耳鼻科空白地帯なのである。駅前に一応一軒あるものの耳にする評判はすこぶる悪く、Googleレビューまで散々たる書き込みだらけだからなのか、検索にも引っかからない有様という地域なのである。それでも諦めず調べたところ、数駅行ったところの高級住宅街に良さそうな耳鼻科があることを知った。しかもWeb予約ができるのである。これ幸いと予約して行ってみることにした。

団地の一角にあるその耳鼻科は明るく、暖色系の内装で統一されていた。待合室で流れていた朝の情報番組を見るともなく見ながら待つ。「きのうのビッグボス」なるコーナーで新庄監督をフィーチャーしていてびっくりしたり、お笑いコンビ錦鯉のまさのりさんの挨拶が「こんにちは」ではなく「こんにちわ」であることを発見したりしていた。日頃「こんにちわ」と書いてしまう夫に、「錦鯉の……バカの方もこんにちわって書いてたよ」と報告したら、しばしの間ののち「バカって言うな!」と言われてしまった。そうこうしているうちに順番が来た。

医師は穏やかそうな男性だった。明るく挨拶をしてくれ、てきぱきと診察を進めてくれる。風邪の引きはじめに耳が痛くなるんですけど、と伝えたものの診察では風邪の兆候は見られなかった。看護師さんのお腹が鳴り響く中で聴力検査をしたものの異常はなく、ただ鼓膜の動きを見るティンパノメトリーがガタガタになっているとのことで耳管の動きが悪いのでは、おそらくゆるんでいるのでは、という見立てになった。じかん、ですか。その言葉を聞いた瞬間、蘇ってきた記憶があった。昔、同じく耳管の動きが悪いと言われ、耳鼻科に通っていたことを。そこでは鼻の奥から耳管に管を突っ込まれ、そこから空気を通す通気というとても痛い処置をされていたことを。思わずその通気の気配を察知してビクッとなったものの、「漢方を出したので薬局で受け取ってくださいね」とのことで処置はなしだった。鼻の下がべしゃべしゃになるネブライザーもなかった。

出された漢方の説明書には「体力を底上げし、元気を出す薬です」という主旨のことが書かれていた。初めて行った耳鼻科で元気を出す薬を出されてしまうとは、そんなに疲れて見えたんだろうか。そしてこの薬を飲み続けても改善せず、通気の気配に怯えながらまた通うことになるのであった。

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