短歌の目 第12回:11月 サイレン止まずに鳴り続けている
1. 渋
ウィンドウに渋く微笑むおじさまは何年経っても同じ服で
2. 容
夕暮れに下ろした髪がなびくからガラスの容器に閉じ込めていたい
3. テスト
「試すのも試されるのも好きじゃない」そうしてテスト用紙を丸めた
4. 新米
新米がつやつやふっくら炊けてるよ だからいつでも帰っておいでよ
5. 野分
足早に帰る人らが溢れてる野分の夕にコロッケかじる
テーマ詠「空」
赤黄色彩る金木犀たちが揺れて香ればほら深呼吸
伸ばしても届かぬ先に空はあり伸ばせば届いた真白い背中
天国は空にあると見上げてるここはどこだ地獄かそれとも
頭上には確かに広がるはずなのにそこにあるのは天井ばかり
赤々と燃える空には火の粉爆ぜサイレン止まずに鳴り続けている