短歌の目 第9回:11月 知ってただから知らない言わない
1. シチュー
真っ白なシチューのとろみの秘密はね 言わないほうが君にはおいしい
2. 声
声が声が聞こえる聞こえる雑踏で名前が名前がわたしの名前は
3. 羽
文鳥が一羽と手紙が三通とそれが去りゆく人のすべて
4. 信
通信を傍受なんてしなくても知ってただから知らない言わない
5. カニ歩き
ドアが開く カニ歩きして詰めていく 殻があったら痛くないのに
6. 蘭
7. とり肌
とり肌を震わせ歩く君の手にケンタッキーのビスケットひとつ
8. 霜
雪が降る へらで削られ霜だったものが雪になる冷凍庫
9. 末
八ならば末広がりと言うけれど8ならメビウス永遠の中
10.【枕詞】ひさかたの
ひさかたの天の真下で笑ってたあなたは強くてとても怖い