短歌の目 第4回:6月 振り返り
すごーく今更なので、こっそり置いておきます。
1.青
真夜中に青いインクで書き付ける孤独はわたしだけに正しい
宇多田ヒカルちゃんのアルバムの中では『ULTRA BLUE』が一番好きなんです。その中でもリードトラックと言うべき『BLUE』は、容赦なく聴く者を切り裂く痛みを文学的な気高さで包んでいてとても好きなんです。
2.梅
沖縄が梅雨入りする頃こちらでは黄色い帽子がまぶしく降ります
いつも、沖縄が梅雨入りしたというニュースをなんだか他人事のように思ってしまうわたしには、小学1年生の帽子は眩しいのです。
3.傘
明くる朝 台風一過の日光に溶けて死にゆく折れたビニ傘
台風のあとに死体遺棄されたビニ傘を見かけますが、傘の内側に溜まった水に容赦無い日差しが反射する様子はまるで溶けていくようだと思ったのです。
4.曲がり角
あの曲がり角の向こうに立つ君は笑顔だったと記憶の改竄
たぶん、君は笑顔じゃないんです。そして、曲がり角を曲がらなかったこともまた、間違いじゃないんです。間違いじゃないけど、もし曲がっていたらと想像してもいいよね。未練がましくても。
5.しそ
紫に染まりしその手の招く先 梅干しおにぎり ひい、ふう、みい、よ
「紫蘇」ではなく「しそ」と敢えて平仮名表記にしてお題を出しました。それを踏まえてちょっとだけ言葉遊びです。梅干しは漬けたことがないのですが。梅酒ならあるよ。
6.紫陽花
「青と赤、どっちの紫陽花が好きなの?」「わたしは白い紫陽花でいたい」
紫陽花の色は土のpHで変わるのはよく言われてることですが、色によって花言葉も変わるんですよね。紫陽花全体の花言葉は「移り気」なのですが、青は「冷淡」、赤は「元気な女性」と言われていて、じゃ白はというと「寛容」です。
7.つばめ
神宮(きゅうじょう)に集いしつばめの愛好家ペンギンに向かいて手を振り傘振る
ヤクルトのマスコット・つば九郎はつばめモチーフなのですがメタボリックペンギンにしか見えないのです。傘を振るのはヤクルトの応援スタイルですね。神宮は憧れの球場で、ドラゴンズファンだけどなんだかヤクルトは好きなんです。
8.袖
口許を袖で拭うお行儀の悪さを許して ダメならキスする
小さいころ、食べこぼしを袖で拭いてよく叱られました。大人になって、口許を拭うのはなにも飲食したときばかりでないと知りました。
9. 筍
しゃくしゃくと筍切ってぶちぶちと茸も切って一緒に炊き込め
きのこたけのこ戦争なんて、炊き込みご飯にしてしまえば一緒なんですよ。
10.たらちねの
たらちねの母に見立てたブラジャーにひっそり踊るハートはマゼンタ
「たらちねの」を漢字で書くと「垂乳根の」となるので、そこからブラジャーを想起したどストレートな歌です。娘より母のほうが派手な下着を身に着けているという話をしばしば聞くのですが、どうなんでしょう。