さらさら録

日々のさらさらの記録

ヒルドイドを安易に美容クリーム扱いすることについて

こんな記事を読んだ。ブコメした。

保湿クリーム 「ヒルドイド」 - My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only

ヒルドイド最強美容クリーム説を見るたびに「やめてくれー」と思う。保険調剤の乱用で本当に必要な人に行き渡らなったらどうしてくれるんだ。わたし自身慢性蕁麻疹で手放せないわけだけど。

2014/12/10 07:58

皮膚科医に「本来肌はバリケードなんだけどあなたの場合はデリケート」と言われたわたしとして、気になることを書いてみた。



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ヒルドイドはどんなときに処方される?


わたしの場合、単品で出されることもあるけど、皮膚科で医師の指示のもとステロイドなどとミックスした状態で出されることもある。皮膚科で出されるミックス軟膏の場合、ヒルドイドかワセリンが基材になってることがほとんどだと思う*1
今までに使ったことがあるのはヒルドイドローションとヒルドイドソフト軟膏。ローションは顔、ソフト軟膏は体に使うことがほとんど。
乾燥に伴う皮膚症状(かゆみ、かぶれ、皮剥けなど)があるときに処方される。
こういう書き方をしたのは、わたしの場合乾燥=かゆいということもあるけど、後述する保険の問題にも関わってくるから。

そういうわけでヒルドイドを使うこともあるけど、副作用がない!とは言い切れない。
わたしの場合、荒れ切ってしまったところにヒルドイドを塗ると、ヘパリン類似物質の血行促進作用のおかげで赤みが出て逆にかゆみがひどくなるのだ。
なので、少しかゆい程度のときまでに留めている。最近だと、風邪を引いて顔と上半身が粉吹いたときにかゆみが出る前に使った。それ以上の乾燥と荒れはステロイド*2を塗って抗ヒスタミン剤の内服でどうにか落ち着かせるしかない。
ついでに、アットノンが謳っているような古い傷跡を目立たなくする効果も実感したことはない。そんな効果があるのなら、今頃肌が色素沈着したり掻き痕がケロイド化したものが残ってたりはしない。

なので、万能薬的に崇めるのはどうなんだ?と個人的には考える。

美容目的で保険適用の医薬品をもらえるのか


元ブログの方は

紹介しておいてアレなんですが、保険適用の薬なので美容目的でやたらめったら買いまくって使うものじゃマナー的にねーよなとは思う。

と書いているけど、マナー的な問題ではないと思う。
保険適用でで約200円と書かれてるけど、手元のヒルドイドソフト軟膏(1本25g)を元に3割負担として薬価を計算してみたいと思う。
医薬品情報によると、1g当たり25.30円。
25.30(薬価)×25(g)=632.5(円)
25.30(薬価)×25(g)×0.3(個人負担)=189.75(円)
初診料・診察料等も合わせると、決してヒルドイドでなければならない理由にはならないはず。いくら処方してもらいやすいとはいえ、治療としての必要性が判断されなければ処方されることもないし、必然性が見受けられなければ最悪健康保険から照会が行くことだってある。
そして、ヒルドイドをもらうために健康保険を使うのもどうなんだろう?と。
美容のために健康保険に7割負担してもらって医療費負担を増加させるのはおかしいんじゃないかな。


乾燥肌へHPクリーム 製品紹介:ノバルティス ファーマ株式会社
こちらのOTC薬は、25gで実売1300円程度。ヘパリン類似物質0.3%配合である点もヒルドイドと何ら遜色なし。
本当に3万円する高級乳液*3に匹敵するのなら、別にヒルドイドじゃなくても同様の成分が配合された1300円のクリームでいいじゃないか。皮膚科に行く手間もないし、待たされることもないし、美容のために様々なリソースを割くこともないし、どうしても勧めたいのならOTCを勧めればいいのではないだろうか。
OTCであっても第二種医薬品に分類されるため、軽い気持ちで使うものではないけども。

また、元ブログで気になった記述。

彼女も乾燥しやすいので一緒に使ってるんだけど、彼女は「調子が良いときの肌」に毎日なってますね。

彼女も処方してもらっているのではなく、元ブログの方が処方されたものを一緒に使っているのだとしたら、薬事法24条「薬局開設者または医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ)してはならない」に違反していることになる。
処方された本人以外に薬を使い回すのは、たとえ家族であっても薬事法違反となりかねない。
Web連載を持つような影響力のあるブロガーがこういったことを書いてしまうのは濃い目のグレーではないだろうか。

<14.12.12追記>
上記部分は元ブログを書かれたid:fahrenheitizeさんからの連絡により削除しています。


誤解に基づいた記載をしてしまったにも関わらず優しく指摘していただき、ファーレンハイトさんには感謝しています。また、詳細な説明は冒頭に挙げた記事に追記されていますので、併せて読んでいただけると幸いです。
お互い肌トラブルに悩む者同士、良き保湿ライフを送れることを願っています。

処方薬が別目的で使われることに対する危惧


今までにも、処方薬が別目的で使われたり乱用されたりして規制されたことはあった。
ヒルドイドと並列に語る薬ではないけど、リタリンが有名な例だろう。リタリンは平たく言えば覚醒剤のような薬で、従来は重度うつ病注意欠陥多動性障害ADHD)・ナルコレプシー患者に処方されていた。しかし、乱用目的で処方を求める患者がいたことと安易に処方するクリニックがあったこととで問題化し、現在はナルコレプシーにのみ適用されている*4
つまり、今までリタリンを必要とし使っていた人に届かなくなったのである。

リタリンのような過激な効き目がないとはいえ、安易に美容目的で使う人が増えた結果、自費扱いの医薬品になる可能性もないとは言い切れない。
自費と保険の混合医療が認められていない現在では今までのようにミックス軟膏の基材としても使えなくなり、本当に必要としている人に届かなくなるおそれだってある。
考えすぎ、極論だと一笑に付されるかもしれないけど、実際に使っている人間からしたら、これは重要な問題だ。

まとめとおまけ


健康保険上の問題、および処方薬の乱用という観点から、ヒルドイドを美容目的で使うことにわたしは反対だ。
肌の仕組み、医薬品のこと、成分のこと、そういった面から評価して、自分に最適な保湿クリームを探してほしい。


ヘパリン類似物質とは:ノバルティス ファーマ株式会社
このブログを書くにあたっていくつかのサイトを参考にしたけど、この製薬会社のサイトは皮膚の仕組みや他の保湿についても載っていてわかりやすい。
敏感肌の人はセラミド配合化粧品を使ってみるといいかもしれない。わたしはそれでかゆみが減っている。

ヒルドイドソフト<前編>海外で保湿に使われていないのはなぜか【分析大好きsenzyuのブログ】 - ココヤク Blog -
目から鱗だった薬剤師さんのブログ。コラーゲンや酵素などもぶった斬ってて面白い。「皮膚に浸透する」と言わず「皮膚の水分を保持する」「皮膚の表面にとどまって」という言い回しをしてるので信用できると思った*5

<14.12.11追記>
書きました。

お気に入り保湿クリーム3選とヘパリン類似物質配合クリームまとめ - さらさら録

<16.02.26追記>
2015-16シーズン版も書きました。
baumkuchen.hatenablog.jp
また、有用な意見が多く寄せられたことから、集合知として読みやすく残すため、コメント欄を整理いたしました。
以前のコメント欄はこちらの魚拓から確認できます。
http://baumkuchen.hatenablog.jp/entry/2014/12/10/235400 - 2016年2月26日 20:23 - ウェブ魚拓
また、当時のブックマークコメントはこちらから確認できます。
はてなブックマーク - ヒルドイドを安易に美容クリーム扱いすることについて - さらさら録

この記事に関しましては、今後わたしからのコメントは控えますので、その旨ご了承くださいませ。

*1:ソースは転居や転職に伴い通院が困難になったため何軒かの皮膚科を渡り歩いた自分。いわゆるドクターショッピングではなく、紹介状持参の上で転院しています。誤解を招く書き方だったので修正しました

*2:用法用量を守れば何も怖くないお薬。四半世紀使ってるけどよく脅しのように言われている副作用はまったく出ていない

*3:って何だろう…クレーム・ドゥ・ラ・メールだろうか。ドゥ・ラ・メールが似てるのはニベア青缶か。ドゥ・ラ・メールもニベア青缶も肌にオイルでフタをする以上の成分は入ってないように見えるんだけど

*4:ピロウズに「Ritalin 202」というかっちょええ曲があるけど、終盤繰り返し出てくるnarcolepsyという言葉が「俺はナルコレプシーなんだ!だから薬をくれよおおお!」と言ってるリタリン中毒者のようにも聞こえる

*5:表皮・真皮・皮下組織からなる皮膚のうち、塗ったものが届くのは0.2mm程度の厚さの表皮まで。真皮まで届いてしまったら表皮の意味がないことになってしまう

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