さらさら録

日々のさらさらの記録

コンサータを飲み始めた頃、しばらく泣いていた話

書こうか書かまいか迷っていたけど、わたしには発達障害がある。いわゆるASD自閉スペクトラム症)とADHD注意欠陥多動性障害)の合併型だ。そして、去年11月からコンサータを飲むようになった。
先日、こんなブコメをしたので、もう少し追記しようと思った。

夫が初めてADHD治療薬コンサータを服薬した日 - にののシステム科学講座

コンサータを飲み始めた頃、見えてきたものの大きさと自分が背負ってきたハンディが苦しくてしばらく泣いていたのを思い出した。/運転はやめた方がいい、わたしもペーパードライバーで生きてくと決めた

2018/04/10 12:42

コンサータを初めて飲んだ日の衝撃は忘れられない。めりめり頭が冴えていく感覚と、昼食もロクに食べられないほどの猛烈な吐き気と喉の渇き、薬が切れたときの猛烈な疲労感。コンサータは大雑把に言うと効いている12時間の間だけ不注意・多動・衝動性を抑える薬だ。そのため、効いている間と切れたときの差の目まぐるしさに驚いた。今は、仕事のある平日と休日に片付けをするときだけ飲んでいる。

コンサータを飲むようになって一番改善したのは、「注意することができるようになった」ということ。以前はどれだけ注意しても「注意したつもり」だったのでぼろぼろミスをしていたけれど、コンサータを飲むことで「注意すること」ができるようになり、その結果ミスをしなくなった。
また、脳内の思考が多動だったため、あれこれ考えては常に頭の中が思考のシャボン玉でぱんぱんだったのだけど、ひとつのことをじっくりと落ち着いて考えられるようになった。ネガティブがネガティブを呼ぶ思考ループに陥らないのだ。ミスをしなくなり、ネガティブループに陥らなくなったことで自分を責める回数が激減した。その結果、二次障害であるうつも劇的に改善した。

「何だ、いいことばかりなのにどうして泣いていたんだ」と思われるかもしれない。だけど、コンサータを飲んで障害が緩和されることで、気づかなくていいことを知ってしまったのだ。それは、「もし障害がなかったら」というifに近づいてしまったことだ。わたしはこれまで、注意欠陥の部分を激しく叱責されることで自己肯定感を奪われ、うつ病を発症し、ミスを重ねることでパワハラの対象となったり失職するという経験をしてきた。でも、もし障害がなかったら、注意欠陥に付随する諸々の困難や生きづらさはなかったのではないか。わたしはもう少し、辛い思いをせずに生きてこれたのではないか。コンサータが切れる時間になるとそう思えてしまい、自然と涙が溢れた。障害を受容していたつもりだったけど、全然そんなことはなかった。それだけ苦しいことに気づいてしまった。

そのことを主治医に話した際、「今までみたいな辛い思いをしなくても、これから生きていけるということですよ」と言われた。昔のわたしだったら、その言葉を受け容れられていなかったかもしれない。だけど、自分と障害に向き合い、少しずつ楽しいことや自己肯定感が増え、「生きたい」と思うようになったわたしには、とても明るく力強い言葉に思えた。
完全に折り合いはついていないし、過去の辛さが供養されたわけでもないけど、どうにか生きていけそうな気がしている。

こういう経験もあるよ、というお話。

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