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さらさら録

日々のさらさらの記録

痴漢をめぐる隔たりと個人的な経験のこと

考えたこと 自分のこと はてブに追記したいこと

前々から、痴漢に遭ったことと痴漢にあったことのない人の間には隔たりがあると思っていた。それは男女間の隔たりで片付けられるものではなくて、女性同士の間でも起こりえるものだ。

女子高生という子どもが、電車内という社会で、痴漢という性被害に遭うことについて|Tamaka Ogawa|note

フラッシュバックを起こす人もいるかもしれないので閲覧注意。/男女問わず色々言われたけど、女性から「痴漢されたって、それ自分が魅力的だって自慢したいの?」って言われたのが一番きつかった

2015/01/07 20:06


25歳くらいの頃、アラフォーだった女性に言われた言葉だった。呆気にとられているわたしに、彼女は「私は痴漢に遭ったことないから、自慢にしか思えない。その人はなぎちゃんに魅力を感じたからしたんじゃない?」と言って、本音を隠した笑顔を浮かべた。わたしは「そんなことないですよ」と曖昧な笑みを浮かべてその場を離れ、悔し涙を流した。
それまでにも、男性にひどいことを言われたことはあった。だけどまさか、女性にまで言われるとは思わなかった。

痴漢にあってる女は男が思ってるより多い

痴漢に遭った話をしても上から下までじっくり舐め回すように見た挙げ句「あんたが痴漢に遭ったの?本当に?」って言われて以来話すのはやめた。外見を気にして黙る人は少なくないと思う

2014/02/24 08:12

これは男性駅員に言われた話。

このとき、痴漢をめぐって生まれる隔たりは単純な男女の二項対立ではなく、痴漢被害者になったことがあるか否かに根源がある、と思った。男性が痴漢に遭うことだってあるし、実際に痴漢被害に遭った経験を語る男性もいる。
痴漢被害に遭ったことのない人には想像もつかない世界を生きている人たちが、この世の中にはいる。


冒頭に挙げたリンクには、筆者が受けた痴漢被害が克明に書かれている。その反応を見て、「服の上から触ることだけが痴漢だと思っている人がこんなにいたんだ」と知った。彼女が痛みを書かなければ、こうして実態を知られることもなかったのかもしれない。


ネットで痛みを告白することと、その反応の話 - さらさら録


今後、個人的な経験の話が続くので、フラッシュバックなどを起こされぬよう閲覧注意。







☆ * ☆ * ☆


わたしは高校時代、自転車通学をしていた。そのため、冒頭の筆者のような経験をしたことはなかった。ただ、自転車通学なら何もないわけではない。
通学路として申告していた道はトラックが猛スピードで行き交っていて、自転車のペダルを踏み込む太ももが風にまくれ上がったプリーツスカートから露わになる。下着まで見えないように片手で膝丈のスカートを押さえると、教科書やお弁当や資料集がパンパンに詰まった前かごを片手で支え切れなくなりよろける。信号待ちで視姦されていると感じたことも、トラック運転手から卑猥な言葉を浴びせられることも何度も何度もあった。
スカートの下にハーフパンツやスパッツを穿いたこともあった。だけど結局、何も変わることはなかった。通学路を変えると大きく迂回することになり信号の数も増えることになる。何より、最短ルートを申告することとなっていたから、その道を通るしかなかった*1
「満員電車だから」「制服だから」と言う人もいるけど、問題はそこではなくて、痴漢行為を行う人間ではないのだろうか。


☆ * ☆ * ☆


大学生になり通学で電車に乗るようになってからも、たびたび痴漢に遭った。黒髪でデブで器量がいいわけでもなく持てたこともなく、ショートヘアに体のラインの出ない長袖チュニックにストレートのジーンズにスニーカーであっても。どんな服でも容姿でも、標的になるときはなってしまうのだと思い知った。性的快感なんてまったくなくて、人間ではなく女という記号として扱われ尊厳を踏みにじられたショックと嫌悪感と「自分に隙があったからなんじゃないか」という自責でいっぱいだった。
なんて書くと「そんな冴えないデブスでも女に見てもらえてよかったじゃねーか喜べよ」と言われるかも知れない。だけど、ひとりの人間としての女性として見られることと、尊厳など存在しない性の対象として記号化された女として見られることは違う。痴漢は、対象になった人間の尊厳を踏みにじり奪う行為という側面も持つのだ。


☆ * ☆ * ☆


いつだって、わたしは声を出せなかった。よろけたフリをして足を軽く蹴って牽制することが精一杯。「声を出せばいいのに」と思うかも知れないけど、子供の頃に遭った痴漢以来、恐怖で声帯が動かなくなり、こうした場面で声を出せなくなった。
小学4年生のある夏の日、わたしは3歳下の妹と木が生い茂るところで遊んでいた。その頃に流行っていたTシャツにスパッツという服装で妹と並んで、「あそこの木にクマゼミがいる!」と見ていたときのことだった。突然、お尻の割れ目に何かが差し込まれるのを感じた。その何かはもぞもぞと動き、割れ目を撫で回した。わたしは動けなくなり固まった。わたしが固まったことに気づいたのか、背後にいた者は手をスパッツとパンツの間へねじ込んだ。
どれくらいの時間が経ったのかはわからなかった。セミの鳴き声が響く中でただ固まったまま、隣の妹に気づかれないようパンツの中の素肌で蠢く手に耐え続けた。その手が抜かれ、「かわいいね、いい子だね」という声と共に頭を一撫でされてようやくわたしは解放された。夏のさらさらとした汗とは違う粘度の高い汗が、顔から手から足の裏から噴き出していた。
わたしは、固まって少しして自分がされていることを理解した。そして、恐怖で声が上げられないこと以上に、妹を守らねばならないと瞬時に判断した。もしも自分が抵抗して、まだ小学校に上がったばかりの妹にその対象が移ったら。妹を危険に曝すわけにはいかないと耐え、恐怖を植え付けるわけにはいかないと、今日このエントリまで誰にも言わずに封じ込めてきた。それ以来、その場所に行かなくなった。
一度、妹に「昔、どこそこに行ったこと覚えてる?」と聞いたことがある。彼女は「どこ?そんなとこ知らない」と答えた。もしかしたら、妹は傷を負わずに済んだのかもしれないし、記憶の奥底に沈んでいるだけかもしれないけど*2


☆ * ☆ * ☆


痴漢をめぐる被害者とそれ以外の人との間の隔たりは、簡単に埋まることはないだろう。それはきっと、痴漢というものがあまりに軽視され見過ごされてきたことにもあるのだと思う。
だから今回、わたしは自身の痴漢経験の一部を語ることにした。隔たりはすぐには埋まらないかもしれないけど、隔たりに絶望するのではなく、まずは知ってもらいたかったから。
こういう経験があった、そのときそう思ったと語ることは勇気がいる。このブログはリアルの友達も読んでいるので、その葛藤はあった。
だけど、痴漢被害に遭った人が声を上げることで初めて始まるものもあると思うんだ。そして、対策を論じる前にできることだって、きっとあるはずなんだ。

このエントリが実態を知ってもらい、何かを考えるきっかけになれば。そう願っています。

*1:ルートを外れて事故に遭ったら災害上問題になる

*2:わたしと妹の間にはこのパターンが多々あるけど、今回それは別のお話

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