さらさら録

日々のさらさらの記録

上書き保存じゃなくて別名保存でもいいじゃん、ね

よく、「女の恋は上書き保存、男の恋は別名保存*1」って言われるけど。
これって結局、人によるとしか言いようがないんじゃないかな。
わたしは完全に別名保存タイプだ。
正確に言うと、別フォルダに保存タイプ。
女の人でも、別名保存タイプは少なくないと思ってる。


会社で、年上の友人たちと話してたときのこと。
2人ともアラフィフで、結婚してて、成人した子どももいて…というひとたち。
彼女たちといわゆる恋バナになったとき、こんなことをそれぞれ言っていた。
「あの時自分から連絡してたら何か変わってたのかなーって、未だに後悔するよ。
 だから、失恋しちゃったけど、なぎさらちゃんは行動できてよかったって思ってる。後悔しない思い出としてしまえるでしょ」
「うんうん。夫に出会う前に大失恋して2週間泣き明かしたけど、もう昨日のことみたいに覚えてるもん。
 無理に忘れなくたって大丈夫、覚えてたっていいんだよ。
 あー、でもやっぱりあのひと素敵だったなー」

失恋したわたしを慰めるための言葉なのかな、と思ったけど、それからも折に触れて彼女たちは昔の恋の話を活き活きと語るのだ。
そしてその口で、今朝の夫の行動を語り、娘の彼氏のことを語る。
わたしは、そんな彼女たちの話を聞くのがとても好き。

…ああ、そうか。
過去に忘れられないひとがいたっていなくたって、こうして今日を生きていくものなんだな、って。
もちろん、上書きして生きていくひともいるんだろうけど。

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わたしの場合、恋愛に限らず、ある程度他人と親しくなるとその人の名前で脳にフォルダが作られる。
そして、何気ない日々のエピソードも大きなイベントも、うれしいこと楽しいこと悲しいことつらいこと腹立たしいことも全部そこに保存されていく。
あんまり思い出したくないひとのことは深い階層にしまうこともあるけど、フォルダごと消去してしまうことはできない。
どんな形であれ、自分と関わってくれたひとの記憶を無くしてしまいたくなくて。
それは、ひどくつらく痛く苦しい過去の黒歴史のような恋愛の記憶も同じこと。なかったことにはできない。
感謝で終わったとはいえ、この前の失恋ですら、「後悔することはないし、忘れることもない」って書き切ってしまっているしね。



今は関わりをなくしてしまったひとたちのフォルダも、脳というHDDがクラッシュしない限り、少しの美化を重ねながらずっと残っていくんだろう。
たまにふと、懐かしい気持ちでフォルダのタイトルを眺めながら。


そうして誰もの中に蓄積されてきたフォルダに勝とうと思ったり、ましてや上書きしてやろうなんて、無謀で無粋だ。
そのフォルダ群だって、今のわたしを、目の前にいるひとを、形作っているもののひとつだ。
核に近い部分にあるであろうそれを否定することなんて、できるはずない。
生きることは、記憶と痛みを重ねていくことなんだから。



そんなことを、皆既月蝕に合わせて着けた指輪を眺めながら思った。
この指輪は数年前、自分への誕生日プレゼントとして買ったもので、繊細な月に寄り添う星が素敵で一目惚れしたもの。
あー、この指輪を買ったショップは確か、高校の頃初めての恋人に指輪を買ってもらった*2ショップだ…なんてぼんやりと思い出して、そこから苦い記憶まで溢れそうでそっとフォルダを閉じたけど。



わたしの親しいひとたちの中にきっと今頃できているであろうわたしの名前のフォルダに、楽しいことやうれしいことをたくさん保存して、小さなひっかき傷を残せるように生きていきたい。
わたしの中の親しいひとたちの名前のフォルダを、楽しいことやうれしいことやちょっぴりの苦いことで満たせるように生きていきたい。

*1:この言葉、「女の恋は上書き保存」は共通なのに「男の恋は」の部分が別名保存だったり名前をつけて保存だったり別フォルダに保存だったり安定してなくて面白い。PCスキルによってる部分もありそうだし

*2:高校生だった頃、校則がゆるい高校だったこともあってペアリングをしている生徒がちらほらいた。ペアリングをしているということは絶大なステイタスで、当時地味で悪い方に浮いていたわたしが右手薬指に指輪をして登校したときはクラスメイトから質問攻めに遭ったものだった

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